コロナ禍にニューカッスルでダラダラする
コロナ対策でスケジュールに余裕を持たせていたが、何も特別なことはなく事がすんなりと進んでゆくので、本日はニューカッスルの街を観光することになった。演奏で十数回来ているので今更感はあるが、観光をしたことはないので、まあ楽しいかもしれない。
まずは宿に向かう。といっても、駅のすぐ隣の Royal Station Hotel である。荘厳な建築で、入り口にセキュリティが立っているし、立地的にも老舗のホテルであると思われる。
レセプションにはインド系の女性と白人の女性の2名の美女がいて、当然マスクをしていないが、それがとても新鮮に感じるのだった。当たり前の話だが、やはりマスクのない世界がいいなあ。
手続きを済ませると「あ、あとですね…」という感じで
「外出して帰ってきたとき、フロントに寄ってもらえますか?」
と言われる。
ここでワンポイントレッスンだが、絵に描いたような
Would you ~ ?
の状況である。目上の人に何か(軽めのね)を頼むのはコレだ。
凄く頼みにくいことの場合はこれでは弱いので
I was wondering if ~
でやっていただきたい。うちのスクールのインストラクターが出勤当日急に休みたい時なんかは必ずコレだ。とほほ…
話を戻さねばならない。
え?外出前に寄れ、というのは鍵の関係で言われたことはあるけど、帰ってきたとき?ですか?カードキーだしなあ。チョトナニイテルカワカラナイ…
「すみません。16時くらいから、システムの問題で、カードキーが使えなくなる事があるかもしれないのです。」
システムのバグかなんかなのだろう。「はーい、わかりました。」
部屋に向かっていくと、廊下にボーイの兄ちゃんがいて、部屋まで案内してくれた。なんか素晴らしいサービスだが、なんとなく不思議な感じでもある。
その理由はすぐに判明した。
隣の部屋の、我がベーシストからメッセージが入る。
「部屋の鍵が開かないっす」
あらあら。
早速出て行って色々試すが、確かに開かない。自分の部屋と同じようにしても開かなければ、フロントを呼び出すしかないか。
自分の部屋を試す。
「ん?」
「ん?」
「あれれ?」
「あ!」
「あああ、そうか!」
うちの部屋はさっきの兄ちゃんが開けたのだった。彼はそういう時のためのマスターキーを持って廊下で待ち構えているヒトだったのである。
そういうわけで、2人とも部屋から締め出され、ワタクシはレセプションまでの長い長い道のりを戻って行ったのだった(巨大なホテルなのだ)。
さて、部屋で少し休憩の後、街へ繰り出しましょう、ということになった。
ホテルから出ると
“It’s freezing!”
気温はマイナス2℃で、風がビュンビュン吹いている。
たまらず、ホテルからすぐのクラフトビール中心のパブに飛び込む。
それじゃ全然、観光にならないではないか。というご意見もあろう。全く仰る通りである。
まだ陽が高いし、駅前という、いわば観光地なので、パブはさほど混んではいなかったが、客もスタッフももちろん誰もがノーマスクであり、昨日までの自分であれば多少緊張する状況であるが、もうこっちに慣れてしまった自分は、バーテンダーの兄ちゃんや姉ちゃん、他の客とも普通にでかい声で会話する。コロナ前と全く同じである。
明日のGIGのオーガナイザーのGrahamからメッセージが入る。
「今夜、うちのスポーツ(ソーシャル)クラブに遊びに来ない?」という話だ。英国紳士、夜はパブ飲み、というのは日本人も知るところだと思うが、だいたい地元には「スポーツ(ソーシャル)クラブ」というものがあって、でかいホールがあり、グラウンドとかもあり、パブスペースがあって…といったものだ。交流の場である。実は明日の演奏は、そこのホールで行うのである。
夕方、そのクラブ South Gosforth Sports & Social Club へ行ってみることにする。
タクシーでもさほどかからないが、自分が鉄道オタクのため、ニューカッスルのライトレール(ここでは、メトロと呼んでいる)に乗っていく。この鉄道は最初の数駅は地下だが、その後地上を走って空港を通ってさらに田舎へ向かう通勤列車である。ニューカッスルのメトロ駅は近代的であるが、地上に出てからの駅は、いかにもイギリスの田舎駅らしい、何にもない感じのものである。
駅に降り立つと雨が降っている。風も相変わらず強い。
クラブハウスでは、今日もパブスペースが営業していて、十数人がのんびり飲んでいる。ビリヤードやピンボールなどをしている人もいる。よくある光景だ。
「お、なんかヘンなやつら来たぞ…」
とはならず
「ああ〜、あんたらか。」
という雰囲気なのは、オーガナイザーとかプロモーターの前宣伝のおかげであり、いつもありがたい。
英国というのは、こういうところでGIGをすると、我々のファンだけでなく、地元の老若男女が「どれどれ、ちょっくら覗いてみるかな」といって来てくれる所である。60歳前後の男女でも普通にロック好きであり、ライブミュージック大好き。日本とは全く違うのだ。だから英国では「ミュージシャン」という職業が普通に成り立つ。日本ではほんの一部のバカ売れしている人々しか音楽で食ってはいけない。
ビール片手に人々と話しながら、いい時間になったので帰ることにする。Grahamが車で送ってくれた。
気がついたら非常に腹が減ったので、チャイナタウンへ行く。ニューカッスルにも小さなチャイナタウンがある。
数回前にロンドンで飢餓状態になった話を読んだ人は覚えているだろうか?そこまで行くと
I’m hungry.
では足らず
I’m starved!
となる。
I’m starving! でもいいし
I’m famished! という言い方もある。
なんでそんなに空腹を訴えるための単語が色々あるのだろうか。
とにかく、非常に空腹である。
さらっと、書いたが、やはり中華が間違いない。味ももちろん、ロンドンでは感染対策バッチリだったのだ。
いい感じの店を発見した。
メニューを見る。おお、素晴らしい!
他の2名は麺料理を食べていた。寒いもんなあ。
自分は中華料理店なのに、カレーを注文。白米が欲しかったのと、中華屋のカレーは美味いはずだ!という確信があった。昨日の晩もカレーだったことは後で思い出した。
マッサマンカレーのような感じで、非常に美味かった。さすがだ。
そして、この店も感染対策バッチリであった。英国中華最強である。
ウェイトレスの女子が片言の日本語で話しかけてきた。勉強しているらしい。そんな、なかなか心安らぐ交流があり、飯は美味くて体も温まり、大満足である。彼女はお会計の紙に「ありがとう」と書き添えてくれていた。
ホテルに戻った。忘れずにフロントに寄り、カードキーの設定をしてもらい、1日が終わった。
tbc